医療看護研究会誌 第12巻1号
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中澤明子:アクティブラーニングを授業に導入するための支援体制:日本とカナダにおける事例からの検討6 相違点としては、東京大学では、机の準備や片づけを行っている一方、マギル大学ではそのような支援は行われていない。これは、教室の特性の違いによる。東京大学では、可動式の什器を設置しているため、什器配置を授業前に行い、授業後は次の授業のために転換する必要が出てくる。マギル大学では、可動式の椅子が導入されているが、机は固定式であるため、什器配置における支援は不要である。 さらに、マギル大学では、利用する教員を対象にしたワークショップやメーリングリストの利用が行われている一方、東京大学では個別の相談・打合せのみであった。これは、マギル大学では教員コミュニティの形成にも焦点を当てているためと考えられる。つまり、アクティブラーニング教室を利用する教員どうしの繋がりを深め、コミュニティ形成を行うことで、教員どうしの情報交換を活発にしてアクティブラーニング導入をさらに進めるねらいがあるものと考えられる。2.教授・学習法に関するアクティブラーニング導入のための支援 東京大学、マギル大学いずれも、アクティブラーニングに関するセミナーやワークショップを開催していた。その共通点として、アクティブラーニング手法の体験が挙げられる。 ワークショップでは、クリッカーを用いて参加者の考えを聞いたり、ギャラリーウォークという手法で活動をしたりするなど、参加者がアクティブラーニング手法を体験していた。これにより、手法の具体的なやり方や利点について理解することができる。 また、マギル大学では、経験の共有を行っていた。つまり、参加者と同じ立場である教員がアクティブラーニング手法を取り入れた授業事例を紹介し、アクティブラーニング手法を取り入れる際の困難や以前と比べての変化などの教員個人の感想を参加者に伝える場となっている。これにより、アクティブラーニング手法を取り入れた授業についての利点が自然と参加者に理解される。 さらに、両大学ともアクティブラーニングに関する情報提供を行っている。アクティブラーニングそのものや手法、効果などを広く教員に周知することに加え、アクティブラーニングについてさらに詳しい情報を求める教員に対する支援であり、アクティブラーニングの導入につながる。3.総合論議 前節、前々節において、東京大学とマギル大学の共通点と相違点をまとめた。これらを踏まえて、大学におけるアクティブラーニング導入のための支援体制について総括する。 東京大学とマギル大学の事例では、アクティブラーニング教室を中心にアクティブラーニング導入の支援を行っている一方で、アクティブラーニング教室に限らず一般教室においてもアクティブラーニングを導入するための取り組みも行っているとのことであった。これらを図4に示す。 アクティブラーニング教室における導入のための支援は、教員が教室を利用する際に必要とするアクティブラーニングの手法や学習環境の理解をもたらす。一方、大学レベルで見た場合、アクティブラーニング手法に関するワークショップで経験の共有や手法の体験、他教員との議論・情報交換が行われることが、教員コミュニティの形成につながる。経験の共有や手法の体験は、教員どうしの議論・情報交換のきっかけになって教員コミュニティの形成が促され、さらにそこで情報交換がなされて、授業改善やアクティブラーニングの導入につながる。また、経験の共有では、アクティブラーニング導入の効果や苦労を知ることができ、導入の動機づけになりうる。 このように、大学においてアクティブラーニングを導入する際には、学習環境を含むアクティブラーニングの理解のための取り組み(例.情報提供等)を行うことに加えて、教員コミュニティの形成につながりうる、経験の共有や手法の体験、議論・情報交換が重要図4 大学におけるアクティブラーニングの導入のための支援体制   (人は教員、灰色文字は支援の内容、下線は支援によってもたらされる効果を示す)

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