医療看護研究会誌 第12巻1号
15/82

順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 第12巻1号(2015)11ー業務以外にも、ナースステーションから最も遠く比較的自立した患者の多い1、2号室を担当していた。遠方から3、5、6号室と続き、ナースステーションの前にある6号室には、重症でケアの必要度が高い患者が入っていた。Aさんは、1、2号室へ行くたびに、彼女のチームが担当するすべての部屋の前を通過した。これが、本稿で紹介する実践の背景にある。 チームメンバーは、新人看護師のBさん、病棟を異動してきて5ヵ月になるCさん、非常勤のDさんの3名だった。Aさんはリーダーとして、次のようにメンバーに関心を向けていた。A リーダーの時は、(略)例えば昨日だったらBさんが新人で、あの部屋を持っていたところで、初めてのことは何で、どのくらいで回ってこられるのかなーとか。(略)申し送りを聞いていて、どういう動きをするのかなっていうのをあの最後のカンファレンスで発言してもらうので、その時にちょっと聞いたりして。で、はい、で、あともう1人の処置(患者の援助にかかわる看護師)はCさんだったので、Cさんはもうしっかり何でも自分でできる人なので、オーダーが出た時も、あの、お願いしますって言えるんですけど、なのでそういう感じで、振り分けというか、振り分けるってわけでもないんですけど、調整していっています。 この語りからもわかる通り、リーダーのAさんは、Bさんの動きやCさんの能力に関心を向けて、仕事の振り分けや調整をしている。Aさんは、自分が担当する患者に注意を向けながらも、チームメンバーである他の看護師の動きにも関心を向けて実践を成り立たせようとしているのである。本稿では、この後Aさんの実践に注目して分析を示すが、Aさんに関心を向けられている他の看護師たちも、互いの動き方や能力に関心を向け、情報を交換しようとしており、こうした互いへの関心がチームの実践の編成に深く関与していることを断っておこう。2.分析例:顔の気配が目に入る/ナースコールが鳴った覚えがない この日の10時20分頃、ナースステーションでは、Aさんが患者[1]さんの次の点滴を準備していた。この前の検温の際に、[1]さんの点滴が無くなりそうであることを確認していたためである。その時、師長が、救命救急センターから転院予定の患者について誰に相談をしたらいいかと、ナースステーションにいる看護師たちに呼びかけた。リーダーであるAさんは自分であると応じ、師長からの相談を受ける。この相談をしているときに患者[1]さんからのナースコールが鳴り、点滴がなくなったと訴えられた。これを聞いたAさんは「忘れてたよ」と呟いた。予め[1]さんに、点滴が終わったら教えて欲しいと依頼をしてあったため、[1]さんはナースコールで連絡をしたようだが、実際にコールで教えられて「忘れてたよ」と呟くのは、呼ばれる前に応じようとしていたことを物語っている。 この後、Aさんは急いで点滴を準備して、[1]さんの病室である1号室に向かう。次の場面はその途中で起こった。(フィールドノーツ:場面の抜粋)Aさんは6号室の前を通り過ぎたところで突然止まり、後戻りして6号室へ入って行った。4人部屋の奥2つのベッドのカーテンが閉まっており、そのカーテンの隙間から一方の患者に声をかけ、続いてもう一方の患者のカーテンの中に入る。(一緒に病室を見ながら歩いていたが、私は何に気づいて6号室に入ったのかがわからなかった。微かな音(?)を聞いて応じた様子) この時Aさんは、[1]さんの点滴を交換しようとして、速足で一番遠くの病室へと向かっていた。しかし、一緒に歩いていた私にもわからないような微かな何かに、Aさんの歩みは止められた。カーテンの隙間から患者に何かを尋ねていることから、Aさんも、明確に何かがわかったわけではない。 このようにフィールドワークをしていて、つまり、看護師の実践に同伴をしているにもかかわらず、その看護師の動きとずれたり、何が起こっていたのかがわからなかったときなどに、それを確認するためにインタューを行った。インタビューをするという判断は、このように行われる。(インタビュー)A たぶんあの時は、患者[3]さんが、見えた、と思うんです、あの通った時に。それで、[3]さんはおトイレの時にナースコールで呼んで

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 15

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です