医療看護研究会誌 第12巻1号
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順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 第12巻1号(2015)15を高め、心身の疾病予防や治療を行う植物療法の一…種5)と定義されている。アロマセラピーの施行方法の1つとして、マッサージや塗布により嗅粘膜・嗅神経から嗅覚系を経て大脳辺縁系や視床下部に作用するだけでなく、皮膚を介し直接皮膚へ作用したり、真皮に到達し毛細血管から血液中に溶解し各臓器や器官へ作用するルートがある5)。 悪性疾患患者の場合、リンパへの転移等によりマッサージが悪影響を与える可能性があることから、マッサージが禁止とされる場合も少なくない。深部静脈血栓症を合併症として患っている場合でも同様の事が言え、介入困難な場合や、要注意事項が多数ある5)−7)。イギリス人看護師 RJ. Buckle が考案したMテクニッ…クⓇは、確立されたタッチ方法であり、それぞれの動きや一連の動作は定められた回数を行い、一定のパターンを一定の圧と速さで行うものであり、決して変化するものではない。誰でも行うことができ、血流やリンパの流れに影響を与えないことから、どんな状態の者にも行うことができる方法とされ、1998年に特許を取得している8)。 先行研究としては緩和ケアや術後ケア、産後ケアの領域で、芳香浴やマッサージとしてのアロマセラピーの効果が明らかにされつつある9)−11)。しかし女性生殖器疾患の患者の術前不安に対して、芳香浴としてのアロマセラピーの効果は先行研究12)で明らかとなっているが、タッチングとしてのアロマセラピーの介入効果については未だ明らかにされてはいない。 そこで本研究では、不安や緊張、喪失感を抱きやすいとされている女性生殖器疾患の中でも、良性疾患患者に対して、アロマセラピーによる介入の効果の検討を行うこととした。Ⅱ.研究目的 本研究は女性生殖器良性疾患の術前患者を対象とし、看護介入として手術前日にアロマセラピーを導入することによる、生理的・心理的側面への効果の検討を目的とする。Ⅲ.方法1.データ収集 2011年6月から2011年10月に首都圏の大学病院1施設の女性専門病棟に入院した婦人科良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮頚管ポリープ、卵管瘤嚢腫、子宮内膜症、卵巣チョコレート嚢胞、卵巣嚢腫)で手術予定の患者30名を対象とした。2.用語の定義 アロマセラピー:植物から抽出した100%天然の芳香物質である精油を、マッサージ・摩擦・吸入・湿布・入浴という方法を用いて、心身の健康の維持増進に役立てる自然療法5)13)とした。 MテクニックⓇ:本研究では、RJ. Buckleより考案されたMテクニックⓇ8)の利点を生かし、対象者の上肢に対して行うタッチング方法のこととした。 エッセンシャルオイル:植物の花、葉、果皮、樹…皮、根、種子、樹脂などから抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質である。各植物によって特有の香りと機能を持ち、アロマセラピーの基本となるもの14)である。 キャリアオイル:脂溶性の性質をもつ精油を経皮吸収させる目的で、希釈に使用する植物油のこと。キャリアオイルによって、精油は真皮層にある毛細血管まで運ばれる14)。施術者が手を自由に対象者の肌の上で動かせるようにするための潤滑油ともなる15)。 光毒性:レモン・オレンジスイート・グレープフルーツなどの精油に含まれるフロクマリン系の多環性化合物が紫外線を効率的に吸収することで、そのエネルギーを皮膚細胞に放出し、これにより強度の日焼けや火傷様の症状を呈すること。(光毒性への対処としては肌につけてから4~5時間は日光に当たらないように注意が必要とされている16)−18)。)3.研究方法1)介入条件 オレンジスイートのエッセンシャルオイルを、タッチング用としてキャリアオイルで希釈した物を使用したMテクニックⓇによる介入群(以下EM群)、キャリアオイルのみを使用したMテクニックⓇによる介入群(以下M群)、普段の看護を行うコントロール群(以下C群)の3群に設定した。対象者を入院順にEM群、M群、C群の順に等間隔抽出法を用いて振り分けそれぞれ各10名の介入を行った。介入場所は対象者のベッドサイドとした。対象者及び同室者への配慮として、対象者が多床室入院患者であった場合には、ベッド周囲を囲むようカーテンをすることで香りの拡散や会話中の様子がわからないようにした。2)介入手順(図1)(1) 各群共に手術前夜の20時に訪室し、TV・携帯電

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