医療看護研究会誌 第12巻1号
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小貫恵理佳:手術を受けた肺がん患者が外来で再発治療を受けながら生きていく体験26Ⅰ.はじめに がんは、1981年以来我が国の死因の第一位1)であり、2013年におけるがんによる死亡者数は約36万人2)と、今後もがん患者の増加が予測される。中でも、全がん患者の死亡原因のうち肺癌は、2013年現在、男性の一位、女性の二位3)と高い割合を占めている。肺癌の特徴は、自覚症状が乏しく早期発見が難しいこと、病理組織型が多様である為、発生部位や組織型によって様々な治療法が存在していることである。肺癌の治療法には、手術療法・放射線療法・化学療法などがあるが、根治を期待できるのは外科的完全切除のみ4)である。日本肺癌学会肺癌診療ガイドラインでは、肺癌の手術治療は非小細胞肺癌の臨床病期 Ⅰ・Ⅱ期には強く勧めるが、臨床病期ⅢB期以降では効果が低い5)とされている。近年では、検診率の増加に伴い臨床病期ⅠA期の早期肺癌の発見が増加6)し、手術療法を受ける患者は年々増加している。また、低侵襲で肺機能の温存が可能な縮小手術例も多数報告7)され、患者の入院期間の短縮や早期の社会復帰が可能となったことにより、肺がん患者の療養の場は、病院から在宅へ移行しつつある。しかし、原発肺癌完全切除例のうち、Ⅱ期再発例の90%が3年以内、Ⅲ期再発例の90%が2年以内に再発している8)ことから、治癒を期待できる手術療法を受けた肺がん患者であっても再発のリスクは避けられない9)といえる。従来、手術後に再発し手術を受けた肺がん患者が外来で再発治療を受けながら生きていく体験Postoperative Lung Cancer Patients’ Experience of Living with Recurrence While Receiving Outpatient Treatment小 貫 恵理佳1)   岡 本 明 美2)ONUKI ErikaOKAMOTO Akemi要 旨 手術後に再発した肺がん患者が外来で治療を受けながら生きていく体験を明らかにし、外来看護援助を検討することを目的に、外来で再発治療を受けている患者7名から半構造化面接によりデータを収集し、質的帰納的に分析した。分析の結果、手術後に再発した肺がん患者が外来で治療を受けながら生きていく体験は【積極的にがんに効くことを実践し自分に合った治療を選択する】【より長く生きるための特効薬の開発を願う】【生涯続く高額な治療費への不安がある】【家族の愛情を再認識する】【繰り返される治療生活の中でも他者との繋がりによって闘病意欲を保つ】【根治を望めない治療による身体変化や病状悪化に落ち込む】【物事を前向きに捉えるように努力する】【残された時間を意識することで価値観が変化する】【死を覚悟しながら生きる】の9つに集約された。患者の体験には、高額な治療を継続することに戸惑いつつも根治薬開発に期待を寄せて主体的に治療を選択する等の特徴があると考えられたことから、根治が望めない高額治療に葛藤している患者の気持ちを理解し、患者が生への希望を失わずに通院治療が継続できるよう支援する等の外来看護援助が示唆された。  キーワード:肺がん、再発治療、外来看護、生きていく体験  Key words:lung cancer, treatment for recurrence, outpatient nursing, experience of living研究報告順天堂大学医療看護学部 医療看護研究16P.26−34(2015)1)独立開発法人 国立がん研究センター中央病院National Cancer Center Hospital2)順天堂大学医療看護学部Faculty of Health Care and Nursing, Juntendo University(May. 8, 2015 原稿受付)(August. 3, 2015 原稿受領)

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