医療看護研究会誌 第12巻1号
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順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 第12巻1号(2015)27た肺がん患者の延命が期待できる治療法はなかった。しかし近年、分子標的治療薬や化学療法剤が進歩10)したこと、肺癌の組織型や癌細胞の遺伝子の状態に応じた個別化治療が行われる11)ようになったことから、再発後も外来通院をしながら自宅で生活する肺がん患者が増加している。 肺がん患者を対象とした先行研究では、化学療法を受けている肺がん患者はコントロールしにくい副作用症状や精神的動揺といった苦悩を抱えている12)こと、手術を受けた肺がん患者は、術前・術後ともに予後に対する不安を抱えながら生きている13)こと、進行肺がん患者は身体機能障害と同時に常に不安を抱えて過ごしており、肺がんと診断を受けた時から自らの死を予感しながら生きている14)ことなどが明らかになっている。しかし、これらの研究は終末期にある肺がん患者を対象にしたものが多く、外来通院しながら治療生活を送っている肺がん患者に焦点を当てた研究は見当たらない。手術後に再発した肺がん患者が外来通院しながらよりよい療養生活を送れるよう支援するためには、外来で治療を受けながら療養生活を送る肺がん患者の体験を明らかにする必要があると考える。Ⅱ.研究目的 本研究の目的は、手術後に再発した肺がん患者が外来で治療を受けながら生きていく体験を明らかにし、手術後に再発した肺がん患者が治療を受けながら自分らしく生きていくための外来看護援助を検討することである。Ⅲ.用語の定義 治療を受けながら生きていく体験を、「手術後に再発した肺がん患者が外来で治療を受けながら生活していくうえで感じ、考え、認識しながら生活する経験」と定義する。Ⅳ.研究方法1.研究対象 本研究の対象者は、外来通院中の肺がん患者のうち、病名の告知を受け、肺がんの根治的手術後に再発と診断され、再手術・化学療法・放射線療法など何らかの治療を受けてから1~2ヶ月以上が経過し、日本語による言語的コミュニケーションが可能で、面接可能な身体的・心理的状態であると外来担当医師及び看護師が判断している者で、研究参加の同意が得られた者である。2.調査内容 調査内容は、肺がん罹患や肺がんの再発治療に対する理解と受け止め、再発治療を受けることに対する考え、再発治療を受けるうえでの困難とそれに対する対処行動、再発治療を受ける中で人生観や価値観の変化、治療を受ける中で支え、今後大切にしたいことである。3.調査方法1)面接調査法 調査内容を網羅したインタビューガイドを用いた半構造化面接を、プライバシーが確保できる場所で、対象者の負担とならないよう30分を目安に2回行った。面接内容は、対象者の許可を得てICレコーダーに録音した。面接では、対象者が話したい内容を尊重し、ありのままの思いを語れるように配慮した。2)参加観察法 研究者は、対象者から研究参加の同意が得られたのち、参加観察者としての立場をとりながら患者と関わりながら、調査内容に関する内容を観察し、観察終了後すみやかにフィールドノートに記録した。参加観察の場面は、外来で医師からインフォームドコンセントをうけている場面、通院治療や看護行為を受けている場面とした。3)記録調査法 対象者の年齢、性別、家族構成、家族歴、職業、既往歴、喫煙歴、術式、診断名、病状・治療経過(治療方針・治療内容・病状説明とその受け止めなど)について、診療記録・看護記録から収集した。4.分析方法1)各対象者における面接調査法、参加観察法、記録調査法から得られたデータを繰り返し熟読する。2)手術後に再発した肺がん患者が外来で治療を受けながら生きていく体験に関連のある記述部分を抽出し、記述の意味を損なわず、かつ内容が明瞭になるように、( )を用いて補足し、簡潔な一文とする。3)簡潔な文章に含まれる中心的な意味内容を一文で表現し意味内容を表す一文とする。4)全対象者から得られた意味内容を表す一文を、意味内容の類似したもので集め、共通する意味内容を一文で表し、コードとする。

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