医療看護研究会誌 第12巻1号
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順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 第12巻1号(2015)35Ⅰ.はじめに リカバリーとは、当事者を擁護する運動として1980年代後半よりアメリカで登場した概念である。リカバリーの概念については普遍的な定義はなく、個々に議論されている途上にある。リカバリーについて野中は「病や障害に挑戦して、自分の人生を取り戻そうとしている過程」1)、Deeganは「地域のなかで暮らし、働き、愛し、そこで自分の意味ある貢献をすること」2)、Raginsは「希望、エンパワーメント、自己責任、生活のなかの有意義な役割の獲得のプロセス」3)と紹介している。諸家の説明より、精神障害者のリカバリーとは、精神病という病に焦点を当てるのではなく、当事者が主体的に自分らしくどう生きるかというエンパワーメントにつながっている。 リカバリーと医学モデルの関係について、野中は「伝統的な治療や援助は、もちろん悪気がなくても、当事者のリカバリーを阻害してしまうことがある。伝統的な医学モデルや保護・管理という援助が主な阻害要因である。」4)と報告している。ジャネットは「精神科就労継続支援B型事業所を利用する統合失調症者の リカバリーに影響する要因Factors Inuencing the Recovery of Schizophrenics Using Employment Continuation Support Establishments (Type B)岡 本 隆 寛1)   広 沢 正 孝2)   四方田   清3)OKAMOTO TakahiroHIROSAWA MasatakaYOMODA Kiyoshi松 本 浩 幸4)MATSUMOTO Hiroyuki 要 旨 就労継続支援B型事業所を利用中の統合失調症者のリカバリーに影響する要因を明らかにすることを目的に、施設のプログラムに参加しながらデータ収集を行い質的な分析を実施した。【結果】12のサブカテゴリーから、8つのカテゴリー、3つのリカバリー段階を生成した。カテゴリー《生きにくさとしての葛藤》、《主体性の喪失》、《かすかな希望と歩み始め》から、リカバリー段階Ⅰとして【エンパワーメントへの初期の方向付け】を生成した。カテゴリー《守られた環境》、《生き方の自由選択》、《回復への確かな希望》から、リカバリー段階Ⅱとして【自己決定による新たな生き方の方向付け】を生成した。カテゴリー《関係性の回復》、《社会参加の手ごたえ》から、リカバリー段階Ⅲとして【社会の一員としての自覚】を生成した。  キーワード:就労継続支援、リカバリー、統合失調症、エンパワーメント  Key words:employment continuation support, recovery, schizophrenia, empowerment  研究報告順天堂大学医療看護学部 医療看護研究16P.35−43(2015)1)順天堂大学医療看護学部Faculty of Health Care and Nursing, Juntendo University2)順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科Graduate School of Health and Sports Science, Juntendo University3)順天堂大学スポーツ健康科学部School of Health and Sports Seience, Juntendo University 4)三育学院大学看護学部School of Nursing, Saniku Gakuin College(May. 8, 2015 原稿受付)(August. 3, 2015 原稿受領)

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