医療看護研究会誌 第12巻1号
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岡本隆寛:就労継続支援B型事業所を利用する統合失調症者のリカバリーに影響する要因36治療の中でも、リカバリーは望ましい効果の一つに数えられています。でも面白いのは、ほとんどの精神科の治療では、結果としてリカバリーを生み出せないのです。」5)と報告している。さらに症状に焦点を当てる弊害について狭間は「病理/欠陥モデルの最大の問題点は、その援助観、人間観が利用者のさまざまな側面の中で欠陥や弱さのみに収斂することにある。この視点からは、人間が本来的に有する強さや成長力などが隠蔽されてしまう。」6)と紹介している。医学モデルでは、保護・管理を強化することにより、当事者の夢と希望というリカバリーを阻害しパワレスの状態をひきおこしていることが示唆されている。 近年、精神障害者の施策は、退院支援から地域定着支援へ、課題の解決を入院という形に頼らないアウトリーチ推進事業が展開され、地域支援型へ急速に転換されつつある。 しかし、精神障害者の地域生活に関する調査では、「精神科通院患者約270万人のうち、外来ニート(六ヵ月以上就職・就学・通所・主な家事をしていない、六十五歳未満)の人は約40万人である。」7)と報告されている。医学モデルでは、当事者の生活を入院から地域へ移行するだけではなく、リカバリーの視点から地域生活支援について検討していく必要がある。 精神障害者の地域生活の場としては、就労生産、仲間との交流、日中の居場所という社会生活の条件を兼ね揃えている就労継続支援B型事業所(以下、作業所とする。)があげられる。しかし、こうした作業所を利用する統合失調症者のリカバリーに関する研究は少なく、当事者がどのようにエンパワーメントされているのか、逆にどのようにパワレスにされているのかを明らかにすることにより、地域生活支援の質の向上に寄与するものと考えた。Ⅱ.研究目的 就労継続支援B型事業所を利用中の統合失調症者のリカバリーに影響する要因を明らかにする。Ⅲ.用語操作上の定義 リカバリー:「地域のなかで暮らし、夢と希望をもって働き、自己決定、自己責任をもち社会の中で有意義な役割を獲得し、主体的に生きること」とする。Ⅳ.研究方法1.研究デザイン 就労継続支援B型事業所を利用する統合失調症者のリカバリーに影響する要因を明らかにするために質的帰納的方法を用いた。2.研究対象者 首都圏にあるA作業所にて週4日以上勤務している統合失調症者で、研究同意の得られた11名を対象とした。A作業所は、「委託業務であっても責任をもって仕事を仕上げる」という指導を一貫し、リカバリーの要素である働く、役割、責任につながる支援がなされていると判断し対象施設として選択した。3.データ収集方法 本研究を依頼する際、施設長よりICレコーダーを用いた面接という形式はとらず、自然な会話のなかから当事者の本音を引き出して欲しいという希望があった。 研究者は、平成22年5月~平成23年2月の期間、午前のプログラム、午後のプログラムを各1回として計26回施設のプログラムに参加し、利用者と共に過ごす形態でフィールドワークを行った。利用者と同じプログラムに参加、昼食、休憩と全ての時間を同じ空間で過ごしながら、主に11時と14時からの休憩時間、12時からの昼食時間、プログラム終了後16時からの時間を中心に1対1で自然な会話のなかでインタビューガイドの内容を質問した。インタビュー回数は、1人に対して4回から7回であった。フィールドノートには、質問に対する語りを忠実に再現し、研究者の解釈は入れないように留意して記載した。4.インタビューガイド1)個人属性(年齢、外来通院、精神科入院経験、生活形態)2)発病したことの振り返り(精神病の意味、障害と治療の受け止め方の変化)3)施設利用を通しての変化(自分自身および周囲の変化、生き方の変化、希望、働くことの意義、役割の自覚、自己責任)5.分析方法1)フィールドノートに記入した語りからリカバリーに影響する意味内容を簡潔な表現になるよう分節

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