医療看護研究会誌 第12巻1号
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順天堂大学医療看護学部 医療看護研究 第12巻1号(2015)39 カテゴリー7《関係性の回復》、8《社会参加の手ごたえ》は相互に影響しあいながら地域社会における関係性の質につながり、リカバリー段階Ⅲとして【社会の一員としての自覚】を生成した。1.カテゴリー1《生きにくさとしての葛藤》 発病することにより生じる、身体的・心理的・社会的なハンディキャップが、統合失調症者として地域社会で生きることの葛藤に繋がっていた。1)サブカテゴリー①〈発病による生活能力の低下〉 精神症状の出現によって昔のような生活ができなくなったと感じていた。慢性期の陰性症状としての意欲低下もあるが、先の見通しがつかないことにより、夢と希望の喪失、薬の副作用なども影響していた。2)サブカテゴリー②〈統合失調症に対する世間の目〉 統合失調症に対する無理解に対して傷つきながらも、一生懸命に生きようとする思いと、世間の壁の厚さの中で、どのように折り合いを付けていくのか、その後の社会生活の質に影響を及ぼすものであった。2.カテゴリー2《主体性の喪失》 当事者は、精神症状による主観的な「生きづらさ」に併せて、統合失調症者であるという周囲からの偏見や過小評価によって「生きにくさ」を感じていた。当事者は、夢と希望をあきらめながら病気と自分を一体化することによって主体性を喪失していた。1)サブカテゴリー③〈統合失調症者というセルフスティグマ〉 統合失調症者というスティグマに対して、患者自身もこの病を受け入れられず、実際の地域生活では、たくさんの不利益を受けるなかに、セルフスティグマが強化されていた。2)サブカテゴリー④〈病気との一体化による安定〉 自分の責任ではなく「病気だから仕方ない」というメッセージが発せられていた。これまで病気と自分自身を切り離して考えることのできない環境のなかで、不本意であるが病気であることによって平衡が保たれていた。3.カテゴリー3《かすかな希望と歩み始め》 作業所に通うことによって変われるかもしれないという希望を抱けるようになってきていた。統合失調症者としての役割から、1人の人間としてどのように生きるべきか、前向きに考えようとする状態で、第1段階の自己決定であり、単独でカテゴリーとした。4.カテゴリー4《守られた環境》 統合失調症者は、意思表示や対人関係が苦手であるというラベリングや自分自身への否定的な感情からの解放であり、作業所における安心できる仲間関係やスタッフとの関係を通して、自分自身の居場所を見出していく状態であった。1)サブカテゴリー⑤〈通じあえる仲間の存在〉 作業所の利用者にとって仲間は、同じような問題を持つ体験の共有者であり、一番の理解者と成り得る存在であった。利用者同士で支えあう双方向的な関係が形成され、通じあえる仲間を獲得していた。2)サブカテゴリー⑥〈安心できる居場所〉 利用者の中には、障害の程度により、作業能力に大きな差が存在していた。しかし、出来ないことを責めるのではなく、利用者間で支えあいながら作業が進められているという特徴があった。また、雇用の場という視点と、就労の訓練の場という視点があった。工賃の安さからも決して満足をしているわけではないが、一般就労のハードルは高く、失敗したときに安心して戻ってこられる場所だと認識し、安心できる居場所となっていた。5.カテゴリー5《生き方の自由選択》 価値ある1人の人間として自分の意思で生き方を決め、責任をもって生きていくという能動的な態度であった。1)サブカテゴリー⑦〈これまでの生き方に対する気付き〉 当事者は、精神障害という枠組みのなかで、精神症状の安定を第一にしてきたが、指示され管理される生き方に疑問を感じるようになってきていた。2)サブカテゴリー⑧〈主体的な自己決定〉 作業所では、受動的であった当事者が、自己決定を求められ戸惑っている様子が伺えた。しかし、その中で「自分は一人の人間としてどのように生きたいのか」から始まり、その決定とその責任を自覚するようになっていた。6.カテゴリー6《回復への確かな希望》 精神障害をもちながらも作業を的確にこなしていく仲間をロールモデルとして、自分自身もあきらめずにがんばろうという思いはストレングスであり、単独で

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