医療看護研究会誌 第12巻1号
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岡本隆寛:就労継続支援B型事業所を利用する統合失調症者のリカバリーに影響する要因40カテゴリーとした。7.カテゴリー7《関係性の回復》 社会の中で期待されること、役割を担うこと、責任を果たし達成感を得ることは自分自身の自尊感情を高めるとともに、他者評価をも高めることであり、信頼しあえる人間関係の回復につながっていた。1)サブカテゴリー⑨〈家族との和解〉 作業所における生産活動は、社会における役割をもち責任を果たすことであった。それは、家族関係においても統合失調症者から一人の社会人として認められ、関係性の変化につながっていた。2)サブカテゴリー⑩〈地域社会とのつながり〉 作業所の活動を通して地域社会に貢献することがあり、地域の人から感謝の声をかけられていた。こうした体験は、社会生活の生きにくさを感じてきた当事者にとって、必要とされ理解されるという体験であり、地域住民の一人としての関係性の回復に繋がっていた。8.カテゴリー8《社会参加の手ごたえ》 統合失調症者として支援される存在から、地域の一員として意味ある役割を獲得し、社会に貢献しているという手ごたえを感じていた。1)サブカテゴリー⑪〈期待されることによる自信〉 統合失調症者として失ってきた、役割、責任、義務などが再獲得され自信につながっていた。2)サブカテゴリー⑫〈収入を得ることによる満足〉 作業所の工賃としては、時給80円~200円が相場となっていた。しかし、作業所利用者の多くは、スタッフが感じているほど生活の困窮は感じていなかった。安い工賃ではあるが、労働の対価としてお金を得ることの喜びを感じ、給料日に受領書に印鑑を押しているとき嬉しそうな生き生きとした表情をしていた。Ⅵ.考察1.エンパワーメントへの初期の方向付け カテゴリー1の《生きにくさとしての葛藤》は、第1に発病により脳のバランスを崩し健康状態に変調をきたすことになる。続いて、環境因子として統合失調症者として世間の偏見に曝され、生きにくさを感じながら、社会参加が困難な状況につながっている。 カテゴリー2の《主体性の喪失》は、一人の人間としてではなく、病気と自分が一体化した状態に置かれている。安定した生活を送るための管理と世間からの偏った見られ方により植えつけられたものである。当事者は、社会における役割や責任を奪われ、「病気だからできない」という周囲からの刷り込みと、「病気だから仕方ない」という自分自身の思い込みによって精神病と自分を一体化させることにより、社会生活の平衡が保たれている。 病理/欠陥モデルによる精神障害者に対する専門職の関わりは、リカバリーにつながりにくいという諸家の報告1)2)5)6)8)がある。具体的には、「判断能力や責任能力、実行する能力がないという医療者側のイメージが、患者の気持ちの先取りや代理行為、失敗させない、苦労させない、精神病院で安定できればよい、という関わりによって、患者の能力を奪い続けてき…た」9)と報告している。 専門職は、統合失調症者の地域生活のイメージとして精神症状の安定が重要であると判断し、管理を強化することになる。それによって当事者は、主体性を失い病気と自分を一体化させなければならない状況に置かれているものと推測できる。 カテゴリー1と2のリカバリーを阻害する要因から、カテゴリー3の《かすかな希望と歩み始め》へ移行することにより新たなステップを踏むことになる。 当事者が初期に抱いている作業所に対する認識としては、「言われたからなんとなく来ている」とあるように意欲も動機づけもない状態から出発している。また、世間の作業所に対する認識としては、「精神の作業所に行ってます。って、なんとなく言いづらい」と語られている。実際に統合失調症者の通う作業所に対する世間の目には偏りがあるが、この語りの意味内容としては自分自身の思い込みも強く影響している。作業所への通所を通して、「自分はなにをすればよいのかわからない、何をしたら治るのかもわからない、でも来ていることで前進かな」という語りが聞かれていた。ここには変われるか、変われないかは判らないが、かすかなリカバリーへの望みや希望が芽生えている。発病による生活機能の障害や社会的不利益を受け入れながら、統合失調症というスティグマから一人の人間としてのリカバリーを始めているものと考えられる。2.自己決定による新たな生き方の方向付け カテゴリー4《守られた環境》では、対人関係が苦手とされる統合失調症者が、「なんと言っても話のできる友達も多いので助かります」と語っている。スタ

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