医療看護研究会誌 第12巻1号
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第11回 医療看護研究会発表要旨52生活を送れるようサポートすること、また、経済的状況や周囲への気兼ねなどにより治療に踏み切れない患者に対しては、納得した治療選択ができるよう治療に関する情報提供や社会的資源活用への支援が重要であることが示唆された。テーマ:成人難聴者の人工内耳装用後の体験-人工内耳装用者の手記の分析から(第2報)-発表者:○羽場香織*1【目的】成人難聴者の人工内耳(以下CI)装用後の「聞こえ」に関する体験を明らかにする。【方法】本邦で発刊されている成人CI装用者の手記(和書)を対象とし、装用者のCIや聴覚障害に対する思い・考え、CIを装用して生活する上での具体的な取組みに着目して装用後の「聞こえ」にまつわる体験を質的帰納的に分析した。【結果・考察】分析対象の書籍は4冊である。著者は4名(男性3名、女性1名)で、3名は成人期に、1名は青年期に耳疾患の罹患により中途失聴し、CI装用に至っていた。失聴期間は、4ヶ月間~31年間と幅広かった。成人CI装用者は、〈聴力回復の可能性を推し量り期待が揺れ動く〉〈音が聞こえて喜ぶ〉〈予想とは違う聞こえ方に戸惑いつつも対処しようと試みる〉〈その時の状況にコミュニケーションが左右される〉〈「健聴者ではない自分」との対峙を迫られる〉〈新しい聞こえの状態に合わせて生活の仕方を工夫する〉〈「ろう文化」の中で生きていく方法を模索する〉等の11のカテゴリーに整理された。成人CI装用者は、CI装用により得た「新しい聞こえ」のもと、年単位で工夫を凝らしながら聞こえる世界での生活の再構築を図ろうとする一方、社会参加に対する支障を強く感じていた。中には、CI装用者であることを周囲に隠すことでろう者として生きる選択をしている者もおり、CI装用により、改めて自己のアイデンティティが大きく揺らぐ体験をしている可能性が示唆された。テーマ:ブログは研究データとして活用することができるのか-Webデータ活用のための法的根拠-発表者:○植竹 貴子*1【背景・目的】我国では79.1%と多くの国民がインターネットを使用している。その中でも幅広い年齢層が使用しているブログを活用し、時系列的な心情の変化や希少事例に対する調査を行えるのではないかと考えた。しかし、ブログを研究データとして使用できるかどうかの見解や使用方法について記載された資料は見られない。よって本研究では、ブログを研究データとして活用するための具体的方法を明らかにすることを目的とした。【方法】医学中央雑誌Web版Ver5を用い、「ブログ」をキーワードとし、過去10年(2005年~2015年)に掲載された原著論文54件のうち14件の関連文献を整理・分類した。次に、ブログ開設業者3社の利用者規約から関連箇所を抜粋し整理した。更に、著作権情報センターに問い合わせ、ブログを研究データとして使用できるか否かについて伺った。【結果・考察】対象文献のうち不特定多数の者が開設したブログをデータとして使用した文献は3件であり、開設者にデータ使用の許可を得ているものはなかった。ブログ開設業者の利用規約では3社ともブログは著作物であり、著作権が適応されることが記載されていた。著作権情報センターからは「著作権法第47条の7」に基づきブログデータは研究データとして使用可能であり、ブログ開設者への承諾は不要であるとの回答を得た。以上より、ブログデータは著作権法に基づき、文章をそのまま使用するのではなく情報解析(抽出・解析・分類)のために研究データとして使用可能であることが明らかとなった。テーマ:膠原病患者が望む生活の実現に向けた協働的介入の現状と課題発表者:○鵜澤久美子*1、長瀬 雅子、青木きよ子 これまで、患者を主体とした医療を実現するために、インフォームドコンセントや情報の開示などの概念が取り入れられてきた。しかし、我が国における患者と医療者との関係は、患者が治療方針の決定を医師に委ねることが多く、未だに医師主導型のパターナリズムの傾向があると言われている。また、医療者が考える適切な療養行動を指導あるいは教育し、患者のセルフマネジメントが充分でない場合には、患者の療養行動が間違ったものと認識されることもある。しかし、慢性疾患患者は日常生活を送る中に療養を取り入れながら症状マネジメントし、日常生活の中で生じる様々な問題に柔軟に対処できるようになる必要がある。人にはそれぞれ「望む生活」があり、それを実現させながら症状マネジメントするためには、患者が主体的に療養生活を確立しなければならない。膠原病は、その疾患の特徴から、病いの体験を周囲の人々に理解しても

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